今、一般社団法人日本能率協会では「HR Camp」など、若手向けのイベントに力を入れている。なぜこうした取り組みを始めたのか。経営・人材革新センターの組織・人材開発グループ兼カスタムソリューショングループでグループ長を務める鈴木雄馬氏にお話を聞いた。

JMA100周年に向けたファンづくりのために

産業界の発展と活性化において、若手の育成は重要なテーマです。人と人、組織と組織をつなぐ役割を長きに亘り担ってきた私たちJMAも近年、若手のビジネスパーソンに向けて様々な取り組みをしています。

JMA1942年創立の長い歴史を持つマネジメント団体です。経営層や管理職層など比較的役職の高い方々に信頼をいただいている一方、2030代の若手層の認知度が高くなく、活動内容も知られていないという問題意識があります。

JMAの活動を早い段階から知っていただき、志に賛同いただける新たな「JMAファン」を育ていきたいと考えているわけです。

JMAが開催する若手を対象としたイベントとしては、私の担当する事業領域では、「HR Camp」「マーケティング総合大会 若手マーケター分科会」「マーケターズ・パーティー」を展開しています。

人事部門の未来を語り合う「HRキャンプ」

人事の未来について議論する場として「HR Camp」があります。JMAでは2023年から、人事部門に所属する方同士で人事の課題や悩みなどを徹底的に議論する場としてこのイベントを始めています。

イベントの参加者は、若手層・ミドルマネジメント層・経営層の3階層で、共通点は人事部門に所属していること、もしくは人事に関する問題意識を持っているということです。当日は基調講演の後に階層ごとに分かれ、あらかじめ提示されたテーマについて議論します。同じ階層同士で議論することで、共通する課題について意見交換ができ解決の糸口を掴むことができます。

その後、全員が一同に集まり、各階層でどんな議論があったのかを共有します。異なる階層をミックスしたグループをつくり、横断的な議論を行います。これにより、価値観や視点の違いを理解するだけでなく、幅広い交流が可能となります。議論の後の懇親会で関係性はさらに深まります。

HR Campが誕生した背景には、双方向の議論型イベントに対する需要の高まりがありました。私たちはこれまで講演形式のイベントを多数実施してきましたが、一方通行の講演会はウェビナーも含めて他にもたくさんあります。各社の人事部門のキーパーソン20名に企画委員として集っていただき検討する中で、真に求められているものは何かを見出して誕生したのが対話を重視したHR Campです。

HR Campで得られる価値は、階層ごとに異なります。若手層は普段接する機会の無い他社の役職者や目上の方に自分の意見を述べ議論することで多くの気づきを得られることでしょう。経営層にとっては、なかなか自社では実現するのが難しい若手と本音の議論をできることが価値になります。ミドルマネジメント層も自分が接する両方の階層の課題意識を知ることができます。

HR Campでは参加者に「人事」という共通点があることで、早い段階から活発な議論が展開されます。成功例だけでなく、課題や失敗談などリアルな生の声を聞くことも貴重な経験です。また、会場に人事の専門知識を持つファシリテータを配置することで議論の質も担保しています。

現在のところ上司や先輩が若手層に声をかけて参加を促すことで、認知度が高まっていくことを期待しています。

昨年は東京・大阪・福岡で開催しましたが、予想以上に参加者が多く、大盛況となりました。「もう少し討議する時間が欲しい」というご要望を受けて、希望者を募って東京でフォローアップイベントを行いました。このイベントでは若手層から経営層までがバスで郊外のキャンプ場へ行き、焚火を囲んで議論しました。非日常的な空間での議論により、同じテーマでもオフィスの会議室で行うのとは、議論の質が変わることを実感しました。

HRキャンプでは忌憚のない議論が交わされる

成長の場を自ら企画する「若手マーケター分科会」

JMAには60年の伝統を持つ「マーケティング総合大会」という若手マーケター向けの事例講演会があります。その中で「若手マーケター分科会」という取り組みを始めています。これは、マーケティング総合大会の主な聴講者である若手マーケターが自分たちの聞きたいセッションを自ら企画するもので、2023年から始まったものです。

背景には、若手が本当に聞きたい講演内容を提供できているのかという我々の問題意識がありました。従来、マーケティング総合大会のセッションは、経験豊富なベテランマーケターの方たちと議論し、決定してきました。彼らから「若手に聞いてもらいたい」と自分たちが考える内容と、実際に若手マーケターが聞きたい内容に乖離があるのではないか、という声が上がっていました。

そこで、若手マーケターに自ら企画してもらう枠(2セッション)を設けることになり、すぐに実現に向けて動き出しました。この取り組みには若手層へのリーチだけでなく、伝統あるマーケティング総合大会を活性化させる意図も込められています。

若手マーケター分科会では、「どんな講演を聞きたいか」「誰にどんな話をしてもらうか」を話し合います。半年の間に4回のミーティングを行い、企画を練り上げていきました。さらに、オフサイトでも集まって議論することもありました。参加者たちは当日の司会進行やファシリテーションも担当し、多くの人が聴講する講演に携わることで、自身の成長につながる経験を得られます。

若手マーケター分科会で企画した講演には多くの人が集まりました。従来にない発想のセッションもあり、総じて好評でした。

若手分科会は今後とも継続していきます。参加した皆さんとJMAとの関係が今後も継続するよう、これをきっかけに様々な支援につなげていきたいと考えています。

「どんな講演を聞きたいか」など自分たちで企画を練り上げる

議論型イベントの「マーケターズ・パーティー」

2024年にマーケターズ・パーティーという若手マーケター向けの議論型イベントを行いました。これはマーケティング総合大会から派生したもので、異業種の若手マーケター同士が議論する場を求める強い声を受けて実現しました。予想を上回る150名が参加し、活発な議論がなされました。

マーケターズ・パーティーの構成は、あらかじめ設定されたテーマに基づき、3つのグループに分かれてディスカッションを行い、最後に全グループが集まって全体での情報共有を行います。

前回のテーマは「優れたアイデア出しとプランニング」「顧客の捉え方、向き合い方」「マーケターとして成長するために必要なこと」の3つでした。参加者は他社の同世代のマーケターと議論することで、自分の現状を客観的に認識することができます。各グループにはマーケティングの専門知識を持つファシリテータを配置し、議論をサポートします。

懇親会も含め、若手マーケターの交流や人脈形成に寄与するイベントができたと自負しています。

他社の同世代と業界の未来像を話し合う機会になる

若手層が成長し続けられる環境をつくる

HR Camp、若手マーケター分科会、マーケターズ・パーティーの3つのイベントをご紹介してきました。現在は、人事部門とマーケティング部門の2部門で若手人材を対象とした企画を行なっていますが、今後は、これらの企画を継続するとともに、対象部門を増やしていければと考えています。

現在20代から30代の皆さんは、10年後、20年後には企業の要職に就き、企業変革を推進する立場になる方々です。若手層の成長に関わり、ともに発展していけるよう今後も支援を続けてまいります。

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